医療・工業・食品業界などで利用する「高圧ガス容器(ガスボンベ) 」に気体を充填するとボンベにかかる気圧は「150気圧」と高い圧力がかかり、過去に「傷・劣化」などが原因で容器が破損し「ボンベが70メートル吹き飛んだ」などの事故もあり、容器管理を怠ったガス容器は「凶器」と化してしまいます。
そんな安全面を重視して管理する必要がある高圧ガス容器のICタグ入出庫・個体管理管理システムをご紹介したいと思います。
1.容器の安全面に懸念点があったボンベ容器の運用管理
「今までは耐圧検査以外に廃棄を行う明確な判断基準の設定が難しかった」と導入した担当者様からお話を伺ったのですが、システム導入前の運用は空ボンベを仕入れた後に用途に合わせたガスを充填し、充填したボンベはユーザーへ出荷をして利用が開始されます。
ユーザー利用後は空ボンベを回収して、ボンベの耐圧検査を実施。耐圧検査で問題があったボンベは廃棄処分し、検査に問題が無いボンベは再度充填されて再びユーザーへ出荷されます。耐圧検査で問題が無ければ同じサイクルで繰り返される運用なのですが、各ボンベに対して「個体認証番号」などの管理番号が無く、耐圧検査が唯一の廃棄の判断基準だったそうです。
また今までのボンベ運用では「個体認証番号」の管理をしていないため、ユーザーへ出荷した後のボンベの長期未回収や盗難された容器の把握が難しく簡単に言えば放置している状態でした。
各ボンベの仕入れ日時・利用開始日時・前回充填日時・充填回数・検査実施日など利用中のボンベ個体情報は管理しておらず、本来は一定回数や一定日数を経過したボンベは、耐圧検査上は問題が無くても安全面を考慮して廃棄処分を行う運用が理想的であり、お客様に対しての付加価値として望ましかったのですが、現状の管理運用では個体管理がネックとなり、耐圧検査を判断基準の材料にしていました。
2.安全基準の標準化で実現したICタグ入庫出庫管理システム
今回システム導入で重視したのは「個体管理の実施」です。仕入れた空ボンベに「ICタグ」を取り付けて個体認識番号を記録するようにし、システムには仕入れ日付・出荷日付・回収日付・耐圧検査日・再利用回数が保存される仕組みになっているので、個体認識番号と紐付かせて個体の利用状況を管理することができます。
またガスを充填したボンベ容器の出荷・空ボンベの回収時にハンディーターミナルでボンベ容器の「ICタグ」を読むことで出荷数、回収数を管理。また工場内にあるボンベ容器も同様に「ICタグ」を読むことで棚卸し管理しボンベ容器の在庫管理を実現することができました。
今回「QRコード」を使わず「ICタグ」を導入した理由に「QRコード」では一点一点個体をスキャンする必要があるのですが、「ICタグ」ですと容器の周辺にハンディターミナルを近づけるだけで読み取りができるので作業効率化に繋がるという判断からでした。
またICタグには多くの情報を保存して、QRコードでは出来ないデータの書き換えが可能なため、充填日などの情報を書き換えて最新情報を保存させるようにしたので、ハンディーターミナルを利用するだけで、各ボンベ容器の個体情報を確認することができ、パソコンでわざわざデータ照会する必要も無くなりました。
しかし一般的に「ICタグ」は周辺に金属があると読み込みにくいと聞いていたため、今回のシステム導入にあたりケーウェイズさんからボンベ運用に最適な「金属に強いICタグ」をご提案いただき導入したことで問題をクリアー。ボンベ自体は金属製ですが、電波干渉することなく個体情報を一度に読み取ることができています。
高圧ガス容器の運用を行うにあたって、人命に関する安全面の確保は非常に気になる点。また利用日時や利用回数など、会社独自のボンベ管理基準を設定することで、利用ユーザーに対して安全面のアピール、企業の取り組みを伝えることで付加価値の高いサービスを訴求することが可能です。