倉庫内や各倉庫間、顧客への製品や原料輸送で利用されるパレット。このパレットは紛失や破損が多い資産の一つですが、物流責任者側からすれば、一枚当たりの稼働率を上げるために構内を的確なパレット数量で稼働させ、庫内保管のパレット在庫数を把握し、各個体の位置情報を把握したい所。
今回は現場管理者の悩みを削減するICタグ(RFID)技術を使ったパレット位置管理システムを紹介したいと思います。
この記事の目次
・パレット所在の把握が出来なかったシステム導入前の現場運用
・ICタグを使ったパレット位置管理のハード構成と運用イメージ
・ICタグとリーダーを連動した在庫管理イメージ
・RFID情報の書き込みと確認はハンディで運用
パレット所在の把握が出来なかったシステム導入前の現場運用
システム導入前は倉庫で利用する7,000枚のパレットに個体番号の印刷管理は実施していたものの、定期的に棚卸を行わなければ構内のロケーションエリアに保存されているパレットの位置情報と個体数の把握は不明確な状態でした。
パレット数が7,000枚にもなると数量の把握だけでなく、各パレットの稼働状況を把握することは難しく、場合によってはフォークリフト作業者が作業しやすい場所にある同じパレットばかりを利用するので、構内の奥にあるパレットは使用頻度が低いという状況も起きパレットの使用頻度の「見える化」が出来ていない運用状況でした。
同じパレットばかり利用すると破損するパレットにも偏りが生まれ、パレット購入の頻度も早くなります。しかし利用方法に偏りがあるのか、パレットが不足しているのか現在の稼働状況からは購入判断が難しい点がありました。
また棚卸を実施するには倉庫稼働を停止しなければならず、棚卸を実施すると稼働日が減ってしまうため、工場が稼働しない休日などで棚卸を実施。
そのため残業手当などの経費が必要となり、費用の兼ね合いを考えると半年や一年に一度しか棚卸作業が実施されず、そのタイミングでしか紛失状況が分からないという悪循環になっていました。
ICタグを使ったパレット位置管理のハード構成と運用イメージ
既存の運用の問題点を解消するために「ICタグ(RFID)」を使った位置管理システムを導入しパレットにICタグを取り付けて個体認証を実現。
ICタグ情報としてパレット登録日、シリアル番号などの個体認識情報を保存させました。
フォークリフトにはパレットを積載・荷降ろしするフォーク(ツメ)部分の後方に2つのアンテナを搭載。このアンテナでパレットのICタグを読み取りさせます。
またフォークリフト本体の運転手の横の部分にも2つのアンテナを搭載。このアンテナはロケーションエリアに進入・退出する際に、ロケーションエリアのゲート部分に取り付けたICタグを読み取るためのアンテナです。
ロケーションエリアのゲート部分のICタグはフォークリフトが進入・退出する場合に、フォークリフトを認識し各ロケーションエリアの識別を行います。
フォークリフトがパレットを積載すると、フォークリフト運転席に取り付けられたパッド画面には積載したパレットの個体識別番号が全て表示、搬入予定ロケーションエリアの番号情報も併せて表示されます。
運転手はこの2つの情報を元に指定されたロケーションエリアにパレット搬入し、搬入完了するとパッド画面の表示情報はクリアーされます。
ICタグ運用を選択した理由
お客様が「バーコード」や「QRコード」を使ったシステム運用でなく、ICタグを使った位置管理システムを導入した背景は、「QRコード」などの管理では個体認識のために、一点一点読み取りが必要となり7,000枚のパレット管理は現実的では無かったためです。
積載・荷降ろしするパレットと位置情報を紐づけして在庫数を管理するために、作業スタッフがスキャン作業を行うのはスムーズではなく非効率であると、お客様とシステム導入後の将来像をイメージしながら打ち合わせを重ねた結果、ICタグ導入の決定に至りました。
ICタグとリーダーを連動した在庫管理イメージ
パレットを積載したフォークリフトは、運転席のパッド画面にパレット個体情報と ロケーションエリア(保管場所)の情報が表示されます。運転手はパッド画面のロケーションエリアを確認して指定エリアにパレットを搬入します。
搬入したパレットは荷降ろし後、ロケーションエリアから退出。退出時に指定ロケーションエリアの在庫情報が荷降ろしされたパレット数を在庫情報として更新します。
在庫更新する仕組み
在庫更新は指定ロケーションエリアにパレット搭載のフォークリフトが進入した時点で、エリアゲートにあるICタグとフォークリフトのアンテナで「どのフォークリフトがどのパレットを積載してエリアに進入したか」を認識。
荷降ろしした後にロケーションエリアから退出したフォークリフトが「どのフォークリフトがどのパレットを荷降ろししてエリア退出したか」を認識することで、指定ロケーションエリアの在庫数を更新することができます。
この一連の作業を繰り返すことで、各ロケーションエリア内のパレット在庫数の把握が実現されます。
RFID情報の書き込みと確認はハンディで運用
パレットや各ロケーションに取り付けるRFIDはパレット追加時やロケーション変更が発生するため、定期的に情報の追加や変更の作業が発生します。
パレット情報やロケーション情報の変更や確認はRFID対応のハンディターミナルを活用。
ハンディターミナルに必要情報を登録してパレットやロケーションのICタグに書き込み(エンコード)して利用。また書き込み情報の確認作業もハンディターミナルにて行います。
何故、私たちが「バーコード」や「QRコード」ではなく「ICタグ(RFID)」を使ったパレット位置管理と在庫管理システムを導入したのか、お分かりになったかと思います。個体把握や位置管理だけでなく、作業の手間を極力減らす運用が必須だからです。
パレット管理を実現して目に見えにくかったパレットコストの圧縮、適正な在庫数量と長期滞留の防止を実現してみては如何でしょうか。現場で養ったノウハウと現場で使えるシステム技術を元にお客様に最適なシステムをご提供いたします。